伍丁目の我楽多はうす

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読了)「Aではない君と」薬丸岳

 

今週のお題「読書の秋」

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「書評」と呼べるレベルのものは全くと言っていいほど書けないが、せめて読んだ本の記録くらいは残しておきたい。
今回は、薬丸岳著「Aではない君と」。

Aではない君と (講談社文庫)

Aではない君と (講談社文庫)

 

  

 

内容紹介


以下、「BOOK」データベースより引用した。(同内容はamazon掲載)

あの晩、あの電話に出ていたら。同級生の殺人容疑で十四歳の息子・翼が逮捕された。親や弁護士の問いに口を閉ざす翼は事件の直前、父親に電話をかけていた。真相は語られないまま、親子は少年審判の日を迎えるが。少年犯罪に向き合ってきた著者の一つの到達点にして真摯な眼差しが胸を打つ吉川文学新人賞受賞作。

 

感想


ストーリーからすると、1997年に神戸で起きた連続児童殺傷事件、通称「酒鬼薔薇事件」のオマージュかと思ってしまう。
が、少年法が云々とか、殺人で一生重い十字架を背負っていくとかではなく、この小説は2つのテーマについて投げかけられていると思う。

テーマ(1)子供の心に耳を傾けるということ


少年鑑別所で翼が吉永へ投げかけたこの言葉が印象に残った。

「子供のことを知ろうとしないってことは子供を捨てたことと同じことなんじゃないの?」

罪を犯す少年や、少年院へ送致される少年の多くは片親などの複雑な家庭環境だったり、親子関係が悪かったりする。
親子関係や家庭環境は思春期の子供にとっての影響は大きい。

翼は14歳という思春期の難しい年頃、親の干渉がうざったいと思う時期だが、この年頃は「大人に見られたい、自分を認めて欲しい、親がウザい、でも構ってほしい」という複雑な気持ちが出る頃。口には絶対出さないが思春期の子なら誰しもがこのような感情を持っているだろう。

反抗期真っ只中でも普段から親が子に対してしっかりと向き合うことができていないければ子供から発せられるSOSが感じ取れず、最悪の場合は親に構ってもらえない淋しさから少年犯罪に手を染めてしまう。
親子関係とは?絆とは?親が子に対して本音で向き合う…子供の話、子供の心の声に耳を傾けること(つまり、翼が言っている「子供を知ろうとすること」)がいかに大事か?ということを考えさせられる。
どんなことがあっても親は親、子は子。「知ってほしい、振り向いてほしい」というのは子供からの悲痛な叫びなのだ。例え離婚して親権を持たない親の側であっても、一生その子の親であることは変わらないのだ。

テーマ(2)心を殺す


同じく翼の言葉より。

「ぼくはあいつに心を殺されたんだ。それでも殺しちゃいけなかったの?」
「心を殺すのは許されるのにどうしてからだを殺しちゃいけないの?」
「心とからだと、どっちを殺したほうが悪いの?」


体の傷は自然治癒で徐々になくなっていくが、傷ついた心は癒えることなくいつまでも被害者の心に深く刻まれ続ける。深く心が傷つくとしまいには鬱状態にだってなり得る。パワハラで鬱状態になり命を絶って行く人もいるのだ。
だが、傷ついたあまり他人の命を奪ってしまうと話は違ってくる。自然治癒できぬ状態まで持って行かれた…つまり肉体が死んでしまえば終わりなのだ。心を深く傷つけられた憎さのあまりに「心を殺した」加害者の「からだを殺し」て良いわけではあるまい。

ではなぜ「心を殺すのは許されるのにからだを殺すのは悪い」のか?法律で決まっているからである、と一概には答えられない。翼のこの発言は親である吉永へだけでなく、読み手の我々にも問いかけている発言のようにも思える。

全体を通して

 
親である吉永よりも、子である翼の心情や発言が重苦しく印象に残ってしまった。

もし自分が同じ親の立場でいたらどのように考え、どのように子へ接していただろう…と終始考えながら読んでいた。
わたしは人の親ではないが、もし自分に子供がいたらきちんと子の心の声や子のSOSを聞いてやれるのだろうか。もとい、向き合えなければ「親」としては失格なのである。

ただ、後半がグダグダな気がした。翼が殺人犯として逮捕され少年審判を迎えるまではテンポよく進んでいたのに、少年審判が終わってからの話は半ばやっつけ感と無理矢理感が満載。そしてクライマックスは呆気なく終わる…正直な感想として、ちょっと物足りない気分で読了した一冊だった。

後半部分のグダグダには閉口したがテーマに関しては考えさせられる内容だったので、もう一度時間を置いてから読み直してみたいと思う。

評価:★★☆☆☆

Aではない君と (講談社文庫)

Aではない君と (講談社文庫)